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言霊のさきわう地 −天照、へリオス、カーネの夢
2024.6.25 (火) - 7.14 (日)
オープニングレセプション:6.25 (火)17:00-19:00
会場:CADAN有楽町 (cadan.org/cadan-yurakucho/)
営業時間:火-金曜日 11:00-19:00 / 土曜日・日曜日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:KAYOKOYUKI
この度6月25日(火)よりCADAN有楽町にて、利部志穂(かがぶ・しほ)による個展「言霊のさきわう地 −天照、へリオス、カーネの夢」を開催いたします。
利部は、壊れた拾得物や、建築資材など、様々なモノを使用して彫刻作品を制作しています。作品においては、それらのモノが有する日常的な意味や機能は解体され、組み合わされることによって新たな関係性が形成され、空間の中に置かれていきます。「人間が定義したルールは疑うけれど、地球的・宇宙的なルールを信じる」と言う利部は、モノに近づき、モノが発する声を聞きながら、その一部となって、自然の摂理とも言える生成や循環を展示空間に構築します。
本展では、アルミニウムと風船の作品を、形を変えながら展示していきます。タイトルは、万葉集の「言霊の幸わう国」という言葉から引用されており、元来美しい言葉、言霊の力に溢れた幸わせな国と読まれた日本のように、豊かな地をつくり、世界に広がっていくように。という作者の願いから付けられています。また副題に古事記やギリシャ神話、ハワイ神話においての太陽にまつわる神々をあげています。作品の中でバランスを重要視する利部は、3.11をきっかけに地震を始めとする天災への 関心と、出産や子育ての経験から身体性を含む自然としての認識を高めました。以前からの「時間」と「変化」への関心に加え、比較神話学や地形の共通点から地球を考える。ということを、日常の料理や散歩、旅や生活の中から、この十数年に渡り行なってきました。実際に利部は、火山地帯の日本の海と山や、イタリア、ハワイ、最近はギリシャのクレタ島、サントリーニ島に足を運び、歩いて、泳いで、木の実を口にすることで、水の違いや気候、風土や文化に触れながら、時間を考え、時にイメージや物語の有効性も感じていきます。彫刻という作品の創作を考えながら、様々な物のやり取りや、環境の変化、物理的な条件などとの共通言語を探っていきます。
言霊のさきわう地
―天照、へリオス、カーネの夢
Splash of Sunlight
透明な海の波間に落ちた太陽の光の輝き、土から吸い上げた水が葉の裏側から雫になって連なる塊、
アスファルトに沈んだ影と視界を覆う砂埃と。
ダルダロスの知恵を借りて、家を捨てテセウスを逃がし、用が済んだら途中の島に捨てられ
置いて行かれた悲しいアリアドネ。固めた羽根で脱出したダルダロスと、息子イカロスの顛末。
地球上の様々な風土や風景の中から、古来各地で共通する神話や民話が語り継がれてきた。
多くの闘いの神と、知恵や技術を司どる神々と動植物のアイコン。自然の恵みへの感謝と脅威からの供儀と祭り。
道徳心などおおよそ無視された、欲望のまま突き進むわがままな神々の振る舞いに憧れすら感じる現代人の
閉塞感の打破と、今とこれから、未来へ向けての、笑いと思考のヒントを渡してくれる。
度々、言霊の存在について考えます。
あらゆる願いや祈りとしての言葉が書かれ、語られ、投げかけられて、
道具として機能させるのではなく、実体のようなもの。誰かの名前を呼ぶ時、大切に発声して贈り出します。
殆どの場合は適切な詞が思いついても、すぐには相手に(人間に限らず)うまく届けることができない。
相互から発せられる熱量や時間と色の波形によって、上手く発語することはできず、
独り言のようなおしゃべりの傍ら、落ちて地面に固まっていきます。
時に、お気に入りの美しい歌が浮かび、心を鎮めて、誰にでもなく、
光の美しさを喜ぶように、細やかな祈りとして唄います。
目の前の些細な方法で、物理的にある限界に羽を折られながら、様々なものに手を触れて動かすことで、
この今、という現実で目撃し、体感することが、今は創作の意味のように感じています。
見て、触れて、歌い、祈ること。
消えかけた魂が、怒りではなくて、火を灯し湧き上がるエネルギーとなるように。
波をかき分けて触れる指や手の感触や、小石を岩に投げて観察するように、
浮力と重力に触れて、地球上の動力や大気を考え、宇宙の中の存在についてやりとりする。
言葉の魂があふれる幸せな地が広がって、
種としての命の選択が行われた人類は、限りある生を実感し、燃やすことが出来るだろうか。
利部志穂
2024.05.14
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「言霊の幸はふ国」『万葉集』(巻 5-894) 山上臣憶良
「磯城島の大和の国は 言霊の助くる国ぞ ま幸くありこそ」
「この日本の国は ことばの魂が人を助ける国であるよ。無事であってほしい。」 『万葉集』(巻 13-3254) 柿本人麻呂
1981年神奈川県生まれ。文化女子大学立体造形コース卒業後、多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2017年より文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、2年間ミラノを拠点に活動。現在は東京都在住。
個展「水平考 ぼくは、空飛ぶ、夢をみる。ホシが、泪が、流れない。」多摩美術大学彫刻棟ギャラリー(東京、2021)、「DOMANI・明日展 2021」国立新美術館(東京、2021)、「メイド・イン・フチュウ 公開制作の20年」府中市美術館(東京、2020)、個展「マントルプルーム ― イザナミ、ペレの怒り。」KAYOKOYUKI(東京、2019)、個展「Dipende」Tempio del Futuro Perduto(ミラノ、イタリア、2018)、 個展「クリティカルポイント-critical point-」gallery21yo-j(東京、2017)、「所沢ビエンナーレ “引込線2015”」旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉、2015)、「KAKEHASHI Project」Japan Society(ニューヨーク、2014)、「アーティスト・ファイル2013ー現代の作家たち」国立新美術館(東京、2013)、「発信 //板橋//2011 けしきをいきる」板橋区立美術館(東京、2011)、「VOCA展2010」上野の森美術館(東京、2010)、個展「返る 見る 彼は、川を渡り、仕事へ向かう公開制作51」府中市美術館(東京、2010)、「back to the drawing board]”もう一度始めから再構築する”」geh8 Kunstraum und Ateliers e.V.(ドイツ、2010)など。