斉藤 思帆 SHIHO SAITO / 谷本 真理 MARI TANIMOTO

一方そのころ meanwhile
2019.4.20 (土) - 5.19 (日)
オープニングレセプション:4.20 (土) 18:00 - 20:00

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  このたびKAYOKOYUKIでは、斉藤思帆と谷本真理によるグループショウ「一方そのころ meanwhile」を開催いたします。

 斉藤思帆は、学生時代に学んだ版画の手法をベースにしながらも、版画の枠に留まらないドローイング作品を展開してきました。斉藤は、SNS上の画像や映画、雑誌のスナップなど、彼女が日常的に目にする様々なイメージをモチーフとして制作しています。それらは、斉藤自身が選び取ったものであり、そのきっかけは「好きな」ものであると言います。しかし、描かれた人物たちの表情はいずれも曖昧であり、描かれた場面は異空間のような儚い印象を受けます。また、斉藤の作品には画面を複数の紙に分割して描かれたものが度々見られ、その接合部分がほんの少しズレていることによって、事実と虚構、あるいは時間軸の歪みを引き起こし、そこにわずかな違和感が生じています。この曖昧さや儚さ、違和感は、斉藤がイメージを作品に変換する過程において対象の表面のディティールに集中して描くことによって、そこに含まれているはずの意味や価値が剥ぎ取られていくことに起因しているといえます。そこには、名前が付与される以前の「何か」が提示されているのです。

 谷本真理は、これまで、自らが考案した「遊び」や「ルール」を用いて、粘土や木材、日用品などを組み合わせたインスタレーション作品を展開してきました。その「遊び」とは、谷本自身の感覚や記憶、あるいは自らのコントロールが及ばない偶然性によって、モノと自分自身を自由に解放しようとする行為であり、その「ルール」は不変ではなく、自在に変化していきます。谷本は、「いろんな素材の中で、土を触った感覚と自分の日常の中での経験とがすんなりと一致して受け入れられた」「自分が考えているよりも先のプロセスが勝手に行われることが面白い」と言い、近年では、素材として特に陶土を選択し制作を行っています。通常では失敗と見なされる焼成時のゆがみや割れ、さらに、陶の表面を覆う釉薬の流れ落ちる特性など、自分の意志とは異なる力による変形をも積極的に作品に取り入れ、「彫刻」や「陶芸」といった領域を軽やかに飛び越え、モノ本来の姿を示しているといえるでしょう。本展の出品作品《MFA》においては、陶で作られた人の頭のような形態とそこに描かれた絵には、関連性があまりないように見え、そこにわずかな混乱が生じています。この混乱こそが谷本が企図した「遊び」であるのです。

 私たちは、知らず知らずのうちに共通の意味を定め、いつの間にか多くのルールに従って日常の生活を送っています。しかし、その意味やルールは本当に不変/普遍なのでしょうか?
 斉藤思帆と谷本真理の作品に示されるわずかな違和感や混乱は、それに対峙する私たちの記憶や感覚を解放し、幼い頃の「遊び」の中で感じたような新鮮な驚きや発見を呼び覚ましてくれるのです。

斉藤 思帆 SHIHO SAITO
1988年東京都生まれ。東京都在住。2014年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース修了。
「winter show」KAYOKOYUKI(東京、2017)、「私は瞬きもせずそれをみつめていた」MANHOOD gallery space(東京、2016)、「M.F.N.S」JINEN GALLERY(東京、2016)、「at last」JIKKA(東京、2014)など。

谷本 真理 MARI TANIMOTO
1986年兵庫県生まれ。東京都在住。2012年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
「遊び」や「予想外」の事象を取り入れた作品を発表。近年は陶を用いて制作をしている。
「裏切られたシーン」clinic(東京、2018)、「ももこさんの壺」ホホホ座ギャラリー(京都、2018)、「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2017」(岐阜県美術館/2017)、「Under 35 谷本真理 展」BankART Studio NYK(神奈川、2014)、「新・陶・宣言」豊田市美術館(愛知、2011)など。